酒米の値上がりと、長雨の秋。大洗の蔵元が思うこと

酒米の値上がりと、長雨の秋。大洗の蔵元が思うこと

湯気が立ちこめる月の井酒造店の蔵

大洗も、朝晩はすっかり冷え込むようになりました。蔵の中にも、少しずつ酒造りの季節の空気が漂い始めています。

はじめまして。茨城県大洗町・月の井酒造店で八代目蔵元をしている、坂本直彦です。
このブログでは、蔵元として思うことや、その時々の流行りなどを、肩の力を抜いて綴っていこうと思います。更新は不定期になりますが、気長にお付き合いください。

記念すべき第1回のテーマは、お米。ちょうどいま収穫の時期をむかえている、酒造りの主役です。
昨年は値上がり、今年は値下がり、そしていまは長雨。この1年、お米をめぐってはいろいろなことがありました。


「令和の米騒動」は、酒蔵にもやってきました

木桶で酒米を洗う様子

「令和の米騒動」。昨年は、この言葉をニュースで何度も耳にしました。米不足で米価が高騰し、とうとう備蓄米まで放出されることに。

皆さんの食卓のお米と同じように、私たちが酒造りに使う原料米(酒米)も、ずいぶん値上がりしました。月の井酒造店の仕入れ値は、例年の2.5〜3倍ほどです。


契約しているお米なのに、どうして?

酒米は、そもそも使う業界が限られています。私たちも毎年、農家さんと契約してお願いしているお米です。需要と供給のバランスはとれているはずなのに、どうして世の中の相場に合わせて上がってしまうのか……。

モヤモヤした気持ちはありました。でも、お米が無いと酒は造れない。ぐっとこらえて、いつも通り酒造りをしました。


そして、日本酒の値上げへ

並んだ月の井の一升瓶

原価が2倍、3倍。普通なら考えられない話ですよね。製品の価格も上げざるを得ず、2025年の夏から2026年の今頃にかけて、全国的に日本酒の値上げが続きました。

月の井も例外ではなく、小売価格で約10〜15%ほどの値上げになったでしょうか。皆様にはご負担をおかけして、申し訳ありません。


お米が安くなっても、お酒は安くならない?

そして今年。こちらもニュースで度々取り上げられていますが、今度は供給過多で、2026年の新米は前年の半値近くまで下がる見込みだそうです(米価の推移は、農林水産省の公表データでも確認できます)。

去年はあれだけ足りなかったのに、今年は余る。こんなことになるなら、もっと考えて備蓄米を放出して、価格をならせばよかったのに……。何故それが出来ないのか、不思議でなりません。

まあ、そんな気持ちもぐっとこらえて。昨年と同じく「お米が無いと酒は造れない」のです。日々の農家さん達の仕事に感謝しながら、これから頂くお米と全力で向き合っていきます。

ちなみに、「お米が安くなったら、日本酒も安くなるの?」と思われた方もいるかもしれません。残念ながら、原料米以外の経費も上がっているので、値下げは無いと思います。どうぞご了承ください。


一難去ってまた一難。今年は、雨です

雨粒のついた実りの稲穂

そしていま、蔵がいちばん困っていること。それが、このところの悪天候です。

例年なら、もう新米が届いて、倉庫がお米であふれて慌てている頃です。ところが今年は、まだほとんどのお米が収穫されていません。台風に加えて収穫の時期に雨が続き、日照不足と田んぼのぬかるみで作業ができず、例年より2週間ほど遅れています。

農家さん達と顔を合わせても、皆さん「仕事にならない」と寂しそうです。

9月24日、久しぶりの青空を見て、農家さんに電話をかけました。

「久しぶりに晴れて良かったですね、そろそろ収穫ですか?」
「まだこの時間は風が無くてだめだ。あと3時間くらい経ってから仕事してみるかな」

晴れたからといって、地面のぬかるみがすぐに乾くわけではない。そんなにすぐ仕事にとりかかれるものではないのですね。農業は奥が深い。日々、勉強です。


今年の酒造りは、少し遅れそうです

木桶と櫂棒が並ぶ仕込みの蔵

本日3回目の使用ワードとなりますが、まさに『お米が無いと酒は造れない』!!

本当は10月中旬から酒造りを始める予定でしたが、収穫の遅れで仕込み開始も後ろにずれています。
酒造りまでの自由な時間が増えた、とポジティブに考えて、しっかり準備しておきます。

※収穫と仕込み開始の状況は、わかり次第この記事に追記します。

今年のお米で仕込むお酒は、新酒の時期にご案内します。
それまでは、昨年のお米で醸した月の井をぜひ。

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次回予告

次回は、今期の酒造りが新しい体制になることについてお話しする予定です。
これからも、どうぞよろしくお願いします。



この記事を書いた人

八代目蔵元 坂本直彦

坂本 直彦(株式会社月の井酒造店 八代目蔵元)
慶応元年(1865年)創業、茨城県大洗町の酒蔵「月の井酒造店」の八代目。「大洗に、授かる酒。」を掲げ、太平洋に面した温暖な気候とミネラル豊富な中硬水を活かし、昔ながらの蔵で自然と向き合う酒造りに取り組んでいます。


参考資料

農林水産省「米の相対取引価格・数量、集荷・契約・販売状況、民間在庫の推移等」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/aitaikakaku.html

※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

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